煽り運転の罰則と判決

可能性のある罰則

道路交通法違反

車間距離不保持として道路交通法違反となる可能性が高い前の車との車間距離を詰めすぎると、車間距離保持義務違反となります。高速道路における車間距離不保持は危険性が高いので3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科されます(119条1項1号の4)、一般道の場合にも5万円以下の罰金が課されます(同法120条1項2号)
反則金等
(普通車)高速道路: 9千円で2点
(普通車)一般道路: 6千円で1点

【判例】

【事故の状況】

2013年(平成25年)11月22日午後10時40分ごろ、運転者のAは普通乗用車を運転して名古屋市緑区にある直線道路の第3車線を時速50~60キロで走行していました。

そこへ、後ろから別の乗用車を運転するBが第1車線、第2車線が空いているのに、Aのすぐ後ろにつき左右に動いてヘッドライトを上向きにするなど、いわゆる「あおり行為」をしてきました。

そこでAは、合図をして第2車線に移行し時速50キロ程度で走行していたところ、Bは第3車線から第1車線まで一気に進路変更した後、合図することなくAの前に車両1台分程度空けて進路変更してきました。

このためAは、スピードを落として車間距離を保とうとしたところ、Bが急ブレーキをかけたためAも急ブレーキを踏み一度は追突を免れました。

しかし、2~3秒後に再度Bが急ブレーキをかけたため、Aはブレーキを踏んだものの、ほとんど停止する寸前で追突しました。

 【急停止したB側が損害賠償を請求】

Bは、この追突事故についてAに責任があるとして、バンパーひび割れの修理費41万円、頚椎捻挫の治療費5万円、慰謝料19万円などの損害賠償として約73万円を請求しました。

Aは、請求は過大であり、あおり運転をしていたBに責任があって、自分には過失はないと主張して全面的に争いました。

【裁判所の判断】

【故意に事故を起こさせた者が、過失責任を問うことはできない】

裁判所は、次のような理由から、Aの損害賠償責任を否定した。

Bは故意に急停止した。

Bは、他の合流車両は存在しないなど正当な理由もないのに2回の急ブレーキをかけており、危険を防止するためにやむを得ない場合を除き急ブレーキをかけてはならないという道路交通法第24条の注意義務を怠っている。

Bはその前からあおり行為して不適切な車線変更をしていたことを考慮すると、Bの急ブレーキには故意があったものと推認される。

追突事故もBが誘発

Aが追突した過失は否定しがたいところであるが、車間距離が車両1台分程度である状況を作り出し、急ブレーキを2回かけたのもBであり、故意にそのような運転をしたBが事故を誘発したものである。

故意に違反をして過失責任を問うのは信義則上許されない

故意に道路交通法違反の運転をしたBが、Aの道路交通法違反の過失責任を問うことは、信義則上許されないというべきであり、Aに事故の損害を賠償すべき責任はない。

【名古屋地裁 2016年(平成28年)1月22日判決】

    ※判決文は、交通事故民事裁判例集 第49巻第1号 72~78頁より引用

危険運転致死傷罪

1. アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2. 進行を制御することが困難な高速度で、又は進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
3. 人又は車の通行を妨害する目的で、通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
4. 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為(以上、原文まま)

死亡事故で1年以上20年以下の有期懲役、負傷事故で15年以下の懲役が科せられます。
2007年5月の法改正により「四輪以上の」の文言が削除されています。

【判例】

2015年に登校中の小学生の列に乗用車が突っ込み、児童6人が重軽傷を負った事件です。危険運転致傷罪で捜査が進められていましたが、危険運転致傷罪は無罪になり、別件で罪に問われていた傷害罪が成立し、30万円の罰金となりました。

検察は睡眠導入剤の検査反応が出たことが事故原因だと主張していましたが、「睡眠導入剤が原因とするには、合理的な疑いが排除できない」という判断が裁判長によってされました。

暴行罪

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の

罰金又は拘留若しくは科料に処する。 (刑法208条)

「嫌がらせのため並走中の自動車に幅寄せしたケース」

*暴行罪に未遂はない。

傷害罪

人の身体を傷害することによって成立する犯罪をいいます。 刑法204条は「人の身体を傷害し

た者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と定めています。

殺人罪

「被害者を死亡させた場合、殺人罪が適用される可能性もあり」

「事案」

バイクに追い抜かれて腹を立てた車両の運転者が、およそ1分間車間距離を詰めてバイクを煽り続けて最終的に追突して死亡させた。

「刑罰」

死刑又は無期若しくは5年以上の懲役刑

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